今年は読書の夏。
たまには
ビカクシダ以外のお話を。
ビカクのお話は
出てきませんので
興味のない方は
スルーしくださいね。
今年の夏季休暇は
コロナウィルスで外出できないし
早朝からクーラーの効いた部屋で
読書することに決めました。
贅沢な休日!
そして、
僕が1番好きな
江國香織さんの本を読む事に。
今回はこの”すいかの匂い”を。
夏になると読みたくなるん
ですよね。
この本は
11人の少女の、かけがえのない
夏の記憶の物語です。
江國さんといえば、男女のお話の
イメージが強いですが、
この本では、
子供独特の感じ方の表現が素晴らしく
本を読んでいると、
ぐいぐい引き込まれてしまいます。
まるで、
実際に僕が経験したかのような感覚に。
懐かしいあの頃に戻してくれるような。
今回も良い読書が出来ました。
クーラーの効いた部屋で本と炭酸水。
すごく朝から幸せでした。
僕は本の書評は、
まったくできないので
僕自身の小さかった頃の
懐かしい”夏の匂い(記憶)”を
思い出してみようと思います。
僕の子供の頃の夏の懐かしい匂いは
”クーラーの効いた和室の畳の匂い”
夏休み期間中の小学校でのプール。
授業での水泳は子供ながらに
不自由な感じがして嫌いだった。
その点、
自由に水と触れ合える子供会の
プール開きはいろんな意味で最高だった。
授業の場合は教室で水着に着替え、
バスタオルをマントのようにして巻き
水着のまま運動場を横断しプールに向かう。
しかし
子供会の場合はプール脇にある更衣室に
直接行き着替えることができた。
コンクリートブロック建ての更衣室は
幼い僕には要塞のように見えた。
要塞の中に入ると外部から
遮断されたような感覚に。
薄暗く天井についた蛍光灯2灯と
壁の上のほうにある換気の為の小窓のみ。
ロッカーは無く木の板で格子状に区切ってある
スペースに荷物や着替えをおく。
まわりをみてもいろんな学年の子がいる
知っている子。知らない子。
知らないおっちゃん。
どこかで見かけたことのある、誰かのおっちゃん。
小学校低学年の僕はそんな状況に
ドキドキしながら一人で着替える。
ほかの子達は両親のどちらかと
来ていたけど僕は一人。
父は仕事人間。母は難病で入院中。
おばあちゃんがいたけど足が悪く
外出できなかったので一人。
少し寂しいのと
少し大人になったような気持ちでプールに来た。
そして着替えがおわり
薄暗い更衣室の重たい鉄の扉をあける。
別世界から、もとの日常に戻るような感覚。
すごく眩しくジリジリと肌に日差しが。
まずは
あの独特の消毒行事。
なぞの消毒液(多分、塩素だろう)が
溜められたスペースに各自、
腰までつかり上からはシャワー攻め
そして数を10数えて脱出し
プールサイドに。
プールサイドはざらざらとした
灰色の独特としたコンクリートの地面。
地面は暑さと
皆の体からしたたりおちる水分で
生ぬるくびちゃびちゃ。
座り込むのが嫌だった。
上はTシャツ、
下はブーメランタイプの水着を
履いた子供会のおっちゃんが
ラジオ体操をし、それを真似た。
それが終わると自由時間。
僕はとりあえず一人、水につかる。
授業では水中メガネは禁止だったけど
子供会はOK。
普段禁止されている行為が出来、
さらに特別感がでる。
そして
透明の水中メガネを装着。
駄菓子屋に売っていた
あの安い水中メガネ。
水に入っても泳がない。
というか泳ぎは得意じゃなかった。
潜るといっても
ただ頭のてっぺんまで。
それでも目の前が
水色に広がる世界に興奮。
潜ったまま歩いたり、
水中での自分の手や足や体をみてみたり
自分の吐いた空気のブクブク泡をさわったり
コースごとの白いラインから
はみ出さないように歩いたり。
水中メガネは中途半端に水の中が見えて
時折いるはずのないワニやサメが
急にあらわれるのではないかと想像し、
恐怖にかられプールから上がったり。
同じ子供会に同学年の子がいなかったし、
人見知りだった僕は一人で遊ぶ事が
ほとんどだった。
一人遊びが苦じゃなかったし
どこかで会った事のあるおばちゃんが、
麦茶や細い缶だった頃のファンタを
くれたので、それだけで十分だった。
そして
自由なプールが終わり要塞のような更衣室へ。
入ってみると来た時よりも
更衣室が明るく感じた。
なぜだかそんな気がしたのを覚えている。
ろくに髪や体の水分を拭き取らないまま
服に着替えて要塞から出ると
あれだけ暑かった外が涼しく感じた。
出口の所で、
子供会のおっちゃん達が子供たち
一人一人にアイスを配っていた。
アイスは大好きだけど
おばあちゃんからプール後の
冷たい食べ物は禁止されていた。
理由はお腹壊すからと。
一瞬断ろうと思ったけど
アイスの誘惑に負けた。
プラスチックのメロンの容器に
入ったやつを選んで
学校の近くの小さい公園で食べた。
古い石の椅子があって座ろうとしたが、
太陽で熱しられてすわれなかった。
だから立ったまま食べた。
メロンのアイスは格別にうまかった。
プールで疲れた体に、
禁止されているアイスを食べるという行為で
いつもよりおいしく感じた。
あっという間に食べ終わり容器を
公園のゴミ箱に捨てた。
ほんとはメロンの容器を持って帰りたいけど
おばあちゃんにバレるのを恐れ捨てた。
おばあちゃんは怖い人でなく
僕にはすごく甘やかしてくれる
おばあちゃんだったので怖いというか
そんな優しいおばあちゃんを
裏切りたくなかった。
実際はアイスを食べたので
裏切ってしまったんだけど。
しばらく歩き
家に着くころには、汗がびっちょり。
帰宅するとおばあちゃんは台所で
腰掛けながら大量のソラマメの皮を剥いていた。
おばあちゃんに、ただいまと伝えて
台所のすぐ隣のおばあちゃんの部屋に。
襖を開けると、クーラーでキンキンに冷えた
和室が僕を待っていた。
茶色い色のクーラーで設定温度もなく
強・中・弱だけのやつ。
もちろん、おばあちゃんは
”強”に設定していてくれた。
部屋の真ん中には使い込まれた
僕の戦隊ヒーロー柄のタオルケットが
おいてあり僕はプールバックを放り出し、
うがいも手洗いもせず、
タオルケットに倒れこんで、くるまった。
そしてタオルケットに顔を押し付け
深く深呼吸。
タオルケットからは
クーラーの効いた和室の畳の匂い
がした。
この匂いは
おばあちゃんの匂いとよく似ていた。
すごく幸せな気分で
タオルケットをぎゅっと抱きしめた。
長くなってしまったけど、
これが僕の子供の頃の夏の匂い。
文章にすると色々連鎖的に
思い出せた自分に驚きました。
よっぽど幸せだったんだと思います。
匂いって、
ほんと色んな記憶を
よみがえらせてくれますよね。
長文読んでくださった方、
ありがとうございました。
そして、
おばぁちゃん、面倒みてくれて
ありがとう。
もう直接伝えることはできないけど
ずっと、この匂いは忘れません。